「いらっしゃいませ。何をお求めですか」

 

「……を2本、それに……を」

 

「おや? お客様、裏モノのことをご存知で」

 

「ああ」

 

「使い方は」

 

「知っているつもりだ。混ぜても大丈夫だな」

 

「ほう、そこまでご存知ですか。で、ナイフはお使いになられますか」

 

「必要なもののようだな」

 

「左様で」

 

「よし、それも付けてくれ」

 

「かしこまりました」

 

 

 

 

 ようやく手に入れた。

 だが、こんなものが本当にあるなんてな。

 ふふふ、コレを使って奴を、あの刑事を……。

 平野……あの刑事め、私の人生をよくもめちゃくちゃに、くそっ。

 

 店主が品物を包むのをじっと見ながら、私は自分の身に降りかかった不幸を思い出していた。

 

 

 

 

 

「島田惣太郎か?」

 

「はい、そうですが‥あなたは?」

 

 私はフォークを持った手を休めると、テーブルに近寄ってきた目つきの悪い男に答えた。

 

 妻の早智子と娘の智恵も怪訝そうな顔をして、その男を見上げている。

 

「警察の者だ。島田惣太郎、強姦の容疑で逮捕する。これが逮捕状だ」

 

 ホテルの高級レストランの中、その男は何かの書面を私に見せ付けたかと思うと、ひそひそとこちらを見て小声で話す他の客のことなど全く気にすることなく、ガチャリと私の両手首に手錠を嵌めた。

 

「あ、あああ……」

 

 警察? 逮捕状? 私が強姦? 何のことだ、そんな馬鹿な!

 

 私は呆気にとられて手錠を嵌められた己の手を見詰めた。

 そんな私を、早智子と智恵は蒼ざめた表情でじっと見ている。

 

「そんな‥外してくれ。

 何かの間違いだ、何かの……。

 それに刑事さん、今日は娘の入学祝いなんだ。

 せめてこの食事が終わるまで待ってくれ、ちゃんと釈明するから。

 私はそんなことやっちゃいない」

 

「犯罪者の分際が何を言うか。さあ、ぐずぐずしないで一緒に来るんだ」

 

「止めてくれ、俺は何もやっていない。無実だ、人違いだ」

 

「あ、あなた……」

 

「違う、違うんだ。これは何かの……早智子、智恵」

 

 だが二人の私を見る目は、怯えと蔑みに満ちたものに変わっていた。

 

「い、いや、いやぁ〜〜〜」

 

 しーんと静まり返ったレストラン。

 刑事に半ば強引に連れ出された私の背中で、早智子の悲鳴だけが響き渡っていた。

 

 

 

 

 

 そして3年、身に覚えのない冤罪を償うための刑期を終えた私は、ようやく刑務所から出所した。

 

 だがそんな私を待っていたのは……孤独だった。

 

 空っぽになった家。

 

 残されていたのは埃を被った1通の離婚届けだけ。

 

 妻は娘を連れて、とうの昔に家を出て行っていたのだ。

 

「くそう、あの刑事め、ろくに調べもせずに。

 よくも私の家庭を……。

 復讐してやる。復讐してやるぞ!」

 

 私は離婚届を握り締め、天井に向かって叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

黒の選択

 

作:toshi9

 

 

 

 

 

 

 

「鬼平さん、どうしたんですか、さっきからにやにやして。気持ち悪いなあ」

 

「え? そうか?」

 

 俺は顎をさすりながら、話しかけてきた部下の三上に答えた。

 

 俺の名前は平野平八郎。刑事だ。

 

 犯罪者に情け容赦しない鬼の平野警部、いやさ鬼平だと何かと評判の悪い俺だが、家庭に戻ると一人の優しい夫であり父親だった。

 

 そう、俺には目に入れても痛くないほど可愛がっている知美という13歳になる娘がいる。

 その娘が今日の私の誕生日、生まれて初めての手料理を作ってくれるというのだ。

 これを喜ばずして何を喜ぼうというのだ。 

 

 

 

「パパ、お帰りなさい」

「ほら、これ知美が一生懸命作ったのよ」

 

 エプロン姿の知美。

 俺の目の前に並べられた皿に盛られた不揃いのコロッケ。

 だがそれは父親である俺への愛情に溢れていて……。

 

 今晩のことを想像していると、また自然と頬が綻んでくる。

 

 

 

「うへぇ、やっぱ今日の鬼平さんおかしいよ」

 

 再び声を上げた三上の声は、だが私の耳には届いていなかった。

 

 

 

 

 

 しかし夕方、そんな俺の気分を一気に吹き飛ばしてしまう事件が起こった。

 妻から、夕食の食材を買いに出掛けた知美が、いつまでたっても帰ってこないと連絡がきたのだ。

 電話の向こうから聞こえる不安に満ち溢れた妻の声に、俺は言い知れぬ不安に襲われた。

 

 犯罪者は許さない。

 

 そう、犯罪者を逮捕するための己のやり方にいささかの疑問も持たない俺だが、強引なやり方を逆恨みされて、これまでに何度も命を狙われているのだ。

 

(まさか知美が……)

 

 俺は慌てて家に戻った。

 

「おい、知美からの連絡はあったのか?」

 

「あ、あなた……いいえ、まだ何にも」

 

「くそう、まさか……」

 

「知美は、知美はいったい」

 

「落ち着け。まだ何かあったと決まったわけじゃない」

 

「え? え、ええ」

 

 妻を励ましてはみたものの、しかし俺の胸中も穏やかではなかった。

 

 そこに突然電話が鳴り響く。

 

 慌てて受話器を取ると、それは果たして知美を拉致した犯人らしき男からの電話だった。

 

「平野刑事、お久しぶりですね」

 

「誰だお前」

 

「あなたを良く知ってる男ですよ。

 さて、あなたの娘さんは、先ほど私が預かりました。

 無事に戻して欲しければ、あなた一人でここに来てください。今すぐにね。

 くれぐれも仲間の刑事に知らせて、私を捕まえようなんて気を起こすんじゃないぞ。

 もしそんなことをしたら、お前の娘がどうなっても知らないからな!」

 

 最初は落ち着いた様子で話していた電話の声は、だが段々と興奮したものに変わっていった。

そして電話は怒鳴るような声でガチャリと切られた。

 

 俺の耳に残るのはツーツーツーという電話の切れた音だけ。

 

 

 

 

 

「……知美が誘拐された」

 

「ぞ、そんな」

 

「俺のせいだ。どうやらこの俺に恨みを持っている奴の仕業らしい」

 

 だが流石刑事の妻、そんな俺を妻は責めるようなことはしない。

表情は蒼ざめていたものの、落ち着いた声で口を開いた。

 

「あなた、自分を責めないでください。

 ……すぐに警察に電話を」

 

「いや、奴の狙いはこの俺だ。

 俺が一人で行って知美を取り戻してくる」

 

「でもあなた、それじゃああなたが……」

 

「大丈夫だ、心配するな。

 俺も鬼平と世間では恐れられている刑事だ。修羅場には慣れているさ。

 ちょっとやそっとのことじゃやられはしない。きっと知美を取り返してくる」

 

「あ、あたしも一緒に行きます」

 

「いや、お前はうちで待っていろ。

 但し、もし俺が今晩戻ってこない時には、明日三上に事情を連絡してくれ」

 

 心配する妻にそう言い残すと、慌しくコートを羽織って俺は家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 さて、電話の主から来るようにと指示されたのは、家から割り合い近い、とあるマンションの一室だった。

 エントランスホールからエレベーターに飛び乗り、指定された部屋のある階で飛び出ると、一気にその部屋に駆けた。

 

 ドアノブをゆっくりと捻る。

 だが鍵はかかっていない。

 

「鍵はかかってないよ」

 

 部屋の中から声が上がった。

 だがそれは電話の声ではなかった。

 そう、それは女性の声だ。

 

(え? この声は……?)

 

 俺は大胆に扉を開けると、部屋の中に飛び込んだ。

 

 だが部屋の中にいたのは、足を組んでソファーに座った一人の少女だけ。

 

 それはセーラー服姿の知美だった。

 

 はて? 

 

「知美、お前無事なのか。

 一人なのか?

 お前をここに連れ込んだ奴はどうした」

 

「うふふふふ」

 

 だが知美は、俺の問いに答えずに、にこにこと笑い続けている。

 

「あの電話の男は誰なんだ。

 これはどういうことだ。

 ……ま、まあとにかく母さんが心配している。早く帰ろう」

 

 その時、笑っていた知美が唐突に口を開いた。

 

「パパ、パパは一人であたしを助けに来たの?」

 

「ああ、そうだよ」

 

「じゃあ一人で来いという約束は守ったんだ」

 

「知美の安全がかかっていたからな……???」

 

 私は娘の問いに胸を張って答えた。

 

 だが、何かがおかしい。

 

「そうか」

 

「知美、これはどういうことなんだ。訳を話せ。

 お前は誘拐されたんじゃなかったのか。

 あの電話の男はどうしたんだ」

 

「ふふっ、パパ、そんなことよりもう少しここでゆっくりしない。

 これでも飲んで、ねっ」

 

 再びにやっと笑う知美。

 その視線の先あるのは、テーブルの上に置かれた2本のペットボトル。

 それはコーラのような真っ黒い飲み物と、ミルクのような真っ白い飲み物だった。

 

「そんなことより早く家に帰るぞ。母さんが心配してる」

 

 だが、そんな私の言葉に耳を貸さず、知美はグラスにボトルの中身を注ぎ込み始めた。

 グラスの半分ほどまで黒いジュースを、そしてその上から白いジュースを。

 

 だがそれはジュースのように見えながら、ペットボトルの中からまるでゼリーのようにゆっくりと出てくる。

 そしてグラスの中で、きれいに白黒の二層に分かれていた。

 

 知美がマドラーをかき回すと、二層に分かれたグラスの中のそれは、マーブル状に混ざっていった。

 

「な、何なんだそれは」

 

「これ? おいしいのよ。

 ねえパパ、早く飲んでみて」

 

 知美がじっと俺を見詰める。

 

「わ、わかった。

 とにかくそれを飲んだらすぐに帰るんだぞ」

 

「うん」

 

 ようやく知美がいつもの笑顔で笑った。

 俺がそれを飲むことがさも嬉しそうに……。

 

 ふと気が付くと、知美の手元に置かれたグラスには別の色の飲み物が入っているようだ。

 淡いピンク色をしたそれは、俺がじっと見ているとゆらっと揺れたように見えた。

 

「パパ!」

 

「え? あ、ああ」

 

 ごくっ、ごくっ

 

 俺は知美が手渡したジュースを一気に飲み干すと、空っぽになったグラスをテーブルに置いた。

 

 それにしても何なんだこれは……不味くは無いが、果たして飲み物なのか?

 

 そう、それはゼリー状の妙な飲み物だった。

 

 

 

 

 

「さあ飲んだぞ、それじゃあ早く帰ろう」

 

「ふふふふ、飲んだ、飲んだね、パパ。いや平野刑事」

 

「え? 平野刑事? 知美……うっ!」

 

 平野刑事?

 まるで他人のように私に向かって話しかけた知美の言葉に思わずぎょっとしたものの、だがそれを問いただす間もなく、突然体の異変が私を襲った。

 

「どうしたんだ……体が、熱い」

 

「ふふふふ」

 

「熱い、ううう」

 

「服を脱ぎな。

 そうだ、お前の娘の手で服を全部脱がせてあげようか」

 

 知美は伸び上がるようにして私の着ているコートに手を掛けると、私から脱がせてしまった。

 

「知美、どうして、やめ……ううう」

 

 尚も俺の服を脱がせようと手を伸ばす知美を払いのけようとするが、何故かどんどん力が入らなくなっていく。

 そして手足から全く力が抜けてしまった俺は、遂にその場に仰向けになって倒れてしまった。

 

 知美はそんな俺のズボンのベルトに手を掛けると、さっと引き下ろしてしまった。

 

 体の奥から湧き上がる奇妙な火照り。

 そして服を脱がせようとする知美の不可解な行為。

 横たわった俺は、ただ惑乱するばかりだった。

 

 知美はそんな俺の体の上に馬乗りになると、ネクタイ、シャツ、そしてトランクスと、着ている服を次々と引っぺがしていく。

 最後のトランクスを足から引き抜くと、知美は素っ裸で寝転がっている俺を、さもおかしそうに見下ろしていた。

 

「ふ〜ん、さすが現役の刑事さんは鍛えているねえ。いい体だ」

 

 握り締めたトランクスをぽいと放り投げると、知美はその小さな指で、俺の腹をさらりと撫でる。

 

「知美、お前さっきから何を……う、うあっ」

 

 突然知美は俺の股間のモノを、ぎゅっと握り締めた。

 

「と、知美、や、やめ、う、うくく」

 

 唖然とする俺の目の前で、知美は俺のモノを擦るようにシュッシュッっとしごき始めた。

 

「くぅ、知美、やめ、やめなさい。何で、ううう、あうぅ」

 

 何故だ、何故知美がこんなこと。

 

 そう思いながらも、まるで全身の火照りがどんどんとそこに集中していくかのように股間から湧き上がる心地よさに、俺はそれ以上のことを考えることができなくなっていた。

 

 はうぅ、熱い、知美、やめ……それ以上は……駄目だ。

 

 火照った股間のモノは、知美の手の平の中で硬さを増していく。

 

 そんな俺の股間を見詰めて、知美は今まで見たことのないような淫靡な表情を浮かべていた。

 

「うっ、いく」

 

 娘に己のモノを刺激されている。

 

 その倒錯した快感に、俺の股間のモノは怒張しきっていた。

 だがもうひとこすりで噴出しようかという瞬間、知美はその手を離した。

 

 え?

 

 知美のほうを見ると、に〜っと笑っている。

 

「と、知美!?」

 

「ここまでよ。

 うふふふ、そんなに硬くしちゃって。

 でもその硬くなったモノを受け入れるのはパパなの。

 今からパパはあたしになるの。

 そしてあたしになったパパが、パパに処女を奪われるの。

 その素敵なモノでね」

 

「お前、何を言って……」

 

「痛いだろうなあ。

 でももしかしたらとっても気持ちいいかもよ。

 全くあたしの手でそんなに大きくなっちゃうなんて、パパの変態。

 でもそれに貫かれるのはパパなのよ。

 どんな顔してこんな大きいモノを受け入れるのか楽しみだなぁ……ってな。

 ふふふ、ふははははは。

 そうそう、それを入れられてよがってるあたしになったパパの姿は、ちゃんとビデオに撮ってあげるからね」

 

 立ち上がった制服姿の知美は、訳の分からないことを口走りながら、仰向けの俺を冷たい表情で見下ろしていた。

 

 スカートの中の青いショーツが俺の目に晒される。

 

「う〜う〜」

 

「ふふっ、ゼリージュース、効いてきたかな。もう喋ることもできないようだね」

 

(う、ううう〜うう〜、何だ、この感じ、何とかしてくれえ)

 

「それじゃあ、そろそろ始めるか」

 

 そう言いながら知美は、に〜っと笑うと、俺の腹に何かを突き立てた。

 

(ひっ!)

 

 俺の表情を覗き込みながら、知美は腹に突きたてた何かをどんどん首筋のほうに移動させていく。

 

 良く見ると、それは奇妙な形をしたナイフだった。

 

(ぐはああ、痛……え? 痛くない?)

 

 ナイフで腹から胸にかけて切り裂かれていくものの、その傷口からは全く血が出てこない。

 それどころか何の痛みさえも感じなかった。

 

 

 

 

 

「さあ出て来い、平野刑事」

 

 知美はナイフで切り開いた傷に両手をかけると、ぐっと押し広げはじめた。

 

(お、おい、知美……)

 

「えい!」

 

 知美が切り開いた皮を一気に左右に広げる。

 

 すると不思議なことに、俺の皮はぺろりと剥けてしまったのだ。

 

(げ!)

 

「うふふふ、どうだ、面白いだろう」

 

(ど、どうなってるんだ。知美、お前……)

 

「何が起きているんだって表情だな。こういうことをさ。ほら!」

 

 知美は腹を皮切りに、俺の体からどんどんと俺の皮を引き剥がしていく。

 

 脚から、腕から、そして頭から俺の皮がずるずると抜けていく。

 

 ひいっ。

 

 思わず声にならない悲鳴を上げる。

 そして知美が俺の目の前に広げて見せたものを見て、今度は驚愕に目を見開かざるを得なかった。

 

 それは、まるで着ぐるみのように、俺の姿そのままに俺の体からすっぽりと抜き取られた、俺の全身の皮だった。

 そう、まるで俺が脱皮でもしたかのように、俺の体から全身の皮がきれいに剥けたのだ。

 

 一方俺自身からは皮が剥けた筈なのに、肌は皮が剥ける前と何ら変わるところが無い。

 

 知美は俺から剥ぎ取った皮をぽいと床に放り投げると、にやっと笑った。

 

「さてと」

 

 そう言いながらセーラー服のリボンを外した知美は、ファスナーを下ろして脱ぎ捨てた。

スカートのホックを外すと、はらりとスカートが床に落ちる。

 

 最後に残ったブラジャーとショーツも脱ぎ去って裸になった知美は、そのまま俺の前に立った。

 

 子供っぽさの残るその体型。

 

 華奢で胸も小さく、股間は未だ生え揃っていない。

 

(知美、やめるんだ。なに!?)

 

 驚く俺の目の前で、知美は突然今度は己の滑らかな腹にナイフを突きたてると、それを徐々に引き下ろしていった。

 俺の時と同じように、そこからは全く血が出てこない。

 そしてその傷を自分で押し開くと、知美はゆっくりと自分の皮を剥いていった。

 

(知美、何を……え?!)

 

 皮の中から出てきたもの、それを見た瞬間、俺は絶句するしかなかった。

 

 そう、知美が自分の皮を剥ぐと、その中からは小太りの男が出てきたのだ。

 

(誰だ、知美じゃない? いや、それよりどうして知美の中から男が……どういうことだ!)

 

 しかも知美の中から出てきた男、それはよく見ると見覚えのある顔だった。

 

(お、お前は島田。

 何で島田が知美の中から? 

 まさか今まで島田が知美の皮を被って、知美に成りすましていたとでもいうのか?

 そんな、信じられん) 

 

「平野刑事、わかりますか? 

 そうです。私ですよ。3年前にあなたに逮捕された島田ですよ」

 

(どういうことなんだ。どうしてお前が知美の中から……知美はどうした。どこだ、本物の知美は)

 

 そう、知美の皮を脱いで中から出てきた小太りの男は、俺が以前強姦事件の犯人として逮捕した、島田惣太郎だった。

 

「ふふふ、先日刑務所から出所したんですよ。

 そして、昨日あるものを手に入れましてね。

 それを使ってあなたに復讐してやろうと思いついたんですよ。

 私を謂れのない罪で刑務所にぶち込み、妻も子供も奪ってしまったあなたに。

 

 では平野刑事、今からあなたには面白い体験をして頂きますよ。

 ふっふふふふ」

 

 そう言いながら、島田は脱いだばかりの知美の皮を両手で広げ始めた。

 

(な、何をする気だ)

 

「ふふふ、言いましたでしょう。あなたはあなたの娘になるんですよ。そしてあなたに犯されるんです」

 

 そう言いながら島田は、動けない俺の体を切り開かれたままの知美の皮の中に押し込み始めた。

 両脚、そして下半身と、俺の体はゆっくりと、だが何のストレスもなく、開かれた知美の皮の中にするすると入っていく。

 

「どうです。自分の娘になっていく気持ちは。

 これを全部被り終えた時、あなたはあなたの娘になってしまうんですよ」

 

(な、なにぃ?? や、やめ……う、うがあ〜)

 

「ふふふ、ほら、こんなに肌がつるつるで、ここだって……」

 

 島田は俺に被せた知美の皮の上から俺の股間に手を伸ばした。

 

(痛っ、え?)

 

 突然股間の内側を鋭い痛みが襲う。

 しかもその痛みと共に、股間に棒のようなものが侵入してくるを感じた。

 

(何なんだ、この感触は、この痛みは……)

 

「私の指であなたを犯してみたんですよ。おっと、遊んでいる場合じゃないですな」

 

 島田はどんどんと俺の下半身から上半身へと知美の皮を被せていく。

 

「ほんと不思議ですねえ。大きなあなたの体にこんな小さい皮を被せることができるんですから」

 

 俺の体に被せられた知美の皮はピンと伸び切ってはいたものの、首から下をすっかり覆い尽くしていた。

 そしてがっちりした体型は保っていたものの、俺の首から下は紛れも無く女性の、いや少女の体へと変わっていた。 

 

 そう、顔と体格は元の俺のままだが、体のほうは、肌の色が白く、胸は少しだけ盛り上がり、股間には……。

 

「じゃあ、これで最後です。頭も中に入れれば終わりですよ。

 さあ、自分の娘になりなさい」

 

(やめろお、やめてくれぇぇぇ…………うぷぷっ)

 

 頭にぐっと伸びた知美の皮を被せられ、視界が真っ暗になる。

 そして俺の気はそのまま遠くなっていった……。

 

 

 

 

 

 

 気が付くと俺はベッドの上に横たわっていた。

 はっと気が付いて上半身を跳ね起こす。

 

「島田……何処だ。え?」

 

 さっきまで裸だった筈の俺は服を着ていた。

 白い袖、紺色のプリーツスカート、胸には赤いリボン。

 それは知美のセーラー服。

 しかも全く窮屈さを感じさせない。

 

 鏡には、ベッドの上に起き上がっているセーラー服姿の知美が映っていた。

 そして鏡の中の知美はいきなりスカートの中に手を突っ込むと、その表情をみるみる驚愕に満ちたものへと変えていった。

 

 だがその行為をしているのは俺自身だ。

 俺が今やっていることを、鏡の中の知美もやっている。

 

「知美、本当にこの知美は俺なのか。

 俺は知美になってしまったのか。

 そ、そんな馬鹿な……あ、あぐっ、声が、俺の声が」

 

「気が付きましたか?」 

 

 振り向くと、裸の島田が手に持った皮を広げて、そこに脚を突っ込もうとしていた。

 

「貴様あ、よくも俺をこんな‥」

 

「かわいい女の子が『俺』なんて言っちゃいけませんね」

 

 そう言いながらも、島田は脚を皮の中に入れ腰に引き上げていた。

 

「何を言って!? お、お前、それは……」

 

「さっきあなたから頂いた、あなたの皮ですよ。これを被って私はあなたになるんですよ」

 

「俺になる? お前何を考えて……」

 

 だが俺の言葉に耳を貸さず、奴は下半身を俺から剥ぎ取った皮の中に入れると、一気に上半身まで潜り込ませていった。

 

 太った島田の体がずるっと俺の皮の中に入り込んでいく。

 

 そして最後に俺の頭の部分を両手で持ち上げ、その中に自分の頭を突っ込んだ。

 

 伸びた頭の皮の中にしゅるっと潜り込んでいく奴の頭。

 

 島田がすっかり俺の皮の中に体全部を潜り込ませると、もう俺の目の前にいるのは、小太りな体型ではあるが俺自身だった。

 

「島田、貴様どういう真似だ」

 

「ふふふ。お、きたきた」

 

 奴の腹のふくらみが、丸太のような太ももが徐々に絞れていく。

 

 太った体が、どんどんとスリムな体型に変化していく。

 

 そしてすっかりその変化が終わった時、俺の目の前にいるのは太った俺ではなく、さっきまでの俺と全く同じ姿をしたもう一人の俺だった。

 しかもその股間はビンと怒張しきったままだ。

 

「お、俺」

 

「ふふふふふ。どうです? 

 今から私が平野刑事ですよ」

 

 その声も俺の声に変わっている。

 

 そう、俺の目の前で裸の俺が、その逞しい体躯と股間の怒張させたモノを恥ずかしげもなく俺のほうに向け、にやにやと笑っていた。

 

「さて、それでは今から俺が平野平八郎。お前は平野知美だ。

 俺はお前の父親。お前は俺の娘、そして……ふふふふ」

 

「何を言う。元に、俺を元に戻せ。知美は何処だ」

 

「言っただろう、知美。女の子が『俺』なんて言っちゃ駄目だって。

 女の子は自分のことを『あたし』って言うもんだぞ。

 俺のこともちゃんとパパと呼ぶんだ」

 

「戯言を言うな、元に、元に戻せ。本物の知美を出せ」

 

「本物? ふふふ、今はあなたが本物の平野知美なんですよ。

 何といっても、あなたが着ているのは本物の彼女の皮なんですから」

 

「どういうことだ?」

 

「あなたに飲んでもらったゼリージュースは黒に白を混ぜたもの。

 あれは、飲ませた人間の着ぐるみが作ることができるんですよ。

 それを被ればその人間の姿になれるという着ぐるみをね。

 でも所詮それはコピーに過ぎません。私が今被っているあなたの皮もそうです。

 

 でもあなたの娘には黒いゼリージュースだけを飲んでもらったんですよ。

 黒ってのは、飲むと皮だけを残してその人間の中身がゼリーになってしまうんです。

 そして残された皮を被った人間は、その人間になることができるんです。

 あなたの被っている皮は、本物の知美さんの皮。

 それを被った今のあなたは、知美さんそのものなんですよ。

 そして本物の彼女の中身は……ふふふふ」

 

「????」

 

「まあこんな説明をしても理解できないでしょう。さてと、それじゃあ始めるとしますか」

 

「始める?」

 

「ふふふ、言いましたでしょう、あなたは自分自身に犯されるんです。

 娘として自分の父親にレイプされるんです。

 そして、このあなた自身の立派なモノであなたが犯されている様子は、ちゃんとビデオに収めてあげますよ。

 でもまあ誰が見ても、あなたが自分の娘を強姦しているようにしか見えないでしょうがね。ふはははは」

 

「や、やめ」

 

 俺が気を失っている間にセットしたのか、ベッドの前にはさっきまでは無かったビデオカメラが置かれていた。

 そのスイッチを入れた島田は、俺の顔でにやりと笑いながら振り向いた。

 

 ぞくっ。

 

「知美」

 

「お、おい、お前‥」

 

「知美」

 

 さっきまでとは全く違う、ぎらぎらした目で近づいてくる島田、いやもう一人の俺。

 

「お前、何を、止めろ、近寄るな」

 

 思わずベッドに座り込んだままじりっと後ずさる。

 

「知美、俺はもう我慢できないんだ。俺のものになれ」

 

「く、来るなあ」

 

「はぁはぁはぁ」

 

 俺が息を荒くし、欲望に満ちた目で近寄ってくる。

 

「やめ、やめて……うっ」

 

 島田は俺にがばっと抱きつくと、己の唇で俺の唇を塞いだ。

 

「ん、んんん〜んん!」

 

 突然胸から痛みが走る。

 

 視線を下ろすと、俺の着ているセーラー服の胸元に奴の手が差し込まれていた。

 

「ふふふ、柔らかいなぁ、知美の胸は。

 とってもいい感触だよ」

 

 もぞもぞと胸を弄られる度に、胸先に痛みが走る。

 

「き、きさまぁ」

 

「さあ、お前の手でパパのモノをもっと気持ちよくしておくれ」

 

「なにを!? うぎっ」

 

 俺の手の平に、ぐにゅりとした生暖かい感触が伝わってくる。

 

 俺の姿をした島田が俺の手を自分の股間に導くと、己のモノを握らせたのだ。

 元々俺のものだったモノを。

 

「ほらほら、よくシゴくんだぞ」

 

 強引に腕を掴まれたまま、ソレを擦らされる。

 

 ……くっ、力が……抵抗できない。

 

「や、やめ、やめろ。気持ち悪い」

 

「気持ち悪い? 俺のモノが気持ち悪いというのか!」

 

 パシッ!

 

 平手打ちが俺の頬に高い音を立てる。

 

「痛っ、な、何を……」

 

「ふひひひ」

 

 ベッドに座り込んだままの俺はセーラー服の胸元を強引に掴まれると、ブラジャーごとびりびりと引き裂かれた。

 

 瞬間、顕わになった俺のちいさな胸がぷるんと揺れる。

 

「ふふふ、俺のかわいい知美、お前の処女はこの俺が、父親の俺が頂くんだ」

 

「や、やめ、やめろお」

 

 掴まれた腕を振り解こうと必死になって抵抗するが、まるで力が違う。

 

 穿かされている俺の青いショーツの中に、奴の左手が強引に潜り込む。

 

「やめろ、気持ち悪い、やめ……うう、やめ、い、いひぃ」

 

 ショーツの中を指が無遠慮に蠢き、そして這い回る。

 そして奴の太い指は、最初はゆっくりと、そして強引にぐっと俺の中に侵入してきた。

 

「い、いた、やめろ、やめろぉ!」

 

 だが痛みを感じつつも、俺は体の奥からは奇妙な心地よさが湧き上がってくるのを感じていた。

 

「この感じ、そんな、いやだ、男の俺が、やめろ、やめてくれ」

 

 俺の中に入った指は、しかし躊躇することなく中をくちゅくちゅと刺激し続ける。

 

「あうう、う、うくぅ……あ、あうん」

 

 段々と力が抜けていく俺の首筋を、胸を、今度は奴の舌が這いずり回った。

 

 ぺろ、ぺろぺろ

 

「いひっ、やめ……くすぐった……あ、あう、あふ、や、やめ……やめて」

 

 ぺろぺろぺろ、ぺろぺろぺろ

 

 体を舐められ、股間には指を出し入れされている。

 

 頭の中では拒否しているのに、段々別の感覚が俺の体を支配していく。

 

 そして俺は体の中から込み上げてくる奇妙な快感と共に、股間の奥から何かが溢れ出てくるのを感じていた。

 

「やめてだって? ほら、知美、お前のココはそう言ってないぞ」

 

 股間から抜いたねとっとした粘液の付いた指を俺の鼻先に突き出すと、奴はいきなり半開きになった俺の口に突っ込んだ。

 

「う、うぷっ」

 

「どうだ知美、お前の愛液だぞ。

 ふふふ、俺のモノがそんなに欲しいんだな。

 待ってろよ、今すぐ入れてあげるからな」

 

 そう、今や俺の奥から溢れてくる粘液は、俺の穿いている青いショーツをも濡らし始めていた。

 

 俺になった島田は、抵抗する力もなくなってきた俺のショーツをぺろりと脱がせると、両手で俺の太ももを押し広げて圧し掛かってきた。

 そして、強引に体を割り込ませてくると、己のモノを俺の股間に宛がい、ぐっと力を入れて押し込んできたのだ。

 

「うっ」

 

「はうっ」

 

「うっうっうっ」

 

「う、うぐっ、うぐっ」

 

 挿入され何度も出し入れされる。

 濡れていたとは言え、やがてソコからは血が滲み始めていた。

 

「う、うぐがっ! いたっ! う、やめ、やめてくれ」

 

「知美、ひひひ、好きだ」

 

「俺の声で、もうやめろお、うぐ、うぐっ」

 

「かわいいよ、知美。さあ一気にいくぞ。うっ」

 

 股間に入り込んだモノが一層硬さと太さを増す。

 そして一際強い力が加えられると共に、俺の股間の奥深くに向かって奔流がほとばしっていった。

 

「あひっ、い、いい、う、うがぁ〜〜」

 

 

 

 

 

 

「お前も俺のモノをしっかり締め付けてたな。

 知美、なかなか良かったぞ」

 

「はぁはぁはぁ」

 

 俺の姿になった島田は、ベッドから降りるとそこでビデオのスイッチを切った。

 

「ふぅ〜、いやほんとなかなか気持ち良かったですよ。

 それにしても私に犯されている様、なかなかかわいかったですよ。

 うん、とても屈強の刑事とは思えませんねぇ。

 平野刑事、あなたもそうしていると中学生の女の子にしか見えませんよ」

 

「はぁはぁ、お前……はぁはぁ」

 

「さて、ビデオも撮れたことだし、私はそろそろ失礼しますか」

 

 再び島田は己の体にナイフを突きたてると、被っていた俺の皮を切り開いて脱ぎ捨ててしまった。

 

「このビデオに映っているのは、実の娘を強姦している現役刑事の姿。

 これを匿名であなたの署に送っておきますよ」

 

「な!」

 

「あなたもこれで犯罪者だ。

 ふふふ、強姦犯として警察に追われるがいい」

 

「……何てことを」

 

「そうそう良いことを教えてあげましょう。

 あなたの娘はあそこです」

 

 島田はテーブルの上に置かれたままの、淡いピンク色をした液体が入ったグラスを指さした。

 

「あれはあなたの被っているその皮の中身、本物の知美さんですよ。

 あれを使えば、あなたの娘さんは復活します。

 但し……ふっふっふっ」

 

 服を着終えた島田は、にやにやと笑いながらナイフをグラスの横に置いた。

 

「そう、あなたの選択は三つ。

 ナイフを取るか、ピンク色のゼリーを取るか、どちらも取らずにずっとそのままでいるかです。

 

 ナイフを手にとってそれを使えば、あなたはあなたの娘の皮を脱ぐことができる。

 娘の姿から元の姿に戻ることができるという訳です。

 しかも脱ぎ終えた皮の中にそのピンク色のゼリーを流し込めば、あなたの娘も元通りに復活する。

 けれどもビデオが警察に届いたその瞬間から、現役刑事のあなたは凶悪な強姦犯になるんです。

 ビデオに映っているのは、誰が見てもあなたが実の娘を強姦している様子ですからねぇ。

 あなたは指名手配され、強姦犯として警察に捕まって、私と同じように臭い飯を食らうことになるんですよ。

 

 ピンクのゼリーを手にとってすぐにそれを飲めば、あなたはその時から身も心もあなたの娘そのものになる。

 娘さんは復活しますが、あなたという存在はこの世から永遠に消えてなくなるんですよ。

 だからまあ警察に捕まることもないでしょうが。

 

 さて、ナイフもピンク色のぜりーもいずれも選ばずにその皮を被ったままでいれば、あなたはこれからずっとあなたの娘として生きていくことになる。

 勿論罪からは免れますが、その代わりあなたは女の子として、父親に強姦された哀れな少女として生きていくことになる。

 

 さあ、どれを選ぶもあなたの自由ですよ。

 それが愛情だとしても、後悔だとしても、保身であっても。あっははっは。

 

 さあて、あなたが何を選択するか……ふっふふふ、楽しみですよ。

 

 家族を、幸せを奪ったあなたへの、これが私の復讐です。

 

 それじゃあ平野刑事さん、いや知美ちゃんと呼んだほうがよいでしょうか?

 もう二度と会うことも無いでしょう。

 これで失礼しますよ」

 

 

 

 島田はそう言うなり、ビデオを持って部屋を出て行った。

 奴が出て行った後、知美の姿でマンションの一室に残された俺の前には1本のナイフと、グラスに入ったピンク色のゼリーが残されていた。

 

 奴の言葉が俺の脳裏に蘇る。

 

「選択は三つ。どれを選ぶのも、あなたの自由ですよ。

 それが愛情だとしても、後悔だとしても、保身であっても」

 

 しばらくの間、俺は机の上をじっと見詰めていた。

 

 ゆっくりと手を伸ばし、そこでぴたりと手が止まった。

 

 俺が選択したのは……。

 

 

 

 

 

(了)

 

                               2005210日 脱稿

 

 

後書き

 よしおかさんにはいつもお世話になりっ放しで、感謝の言葉もないのですが、今回せめてものお返しにと思い、この作品を書いてみました。

 如何でしょう、お楽しみ頂けましたでしょうか。

 

 さて、この作品は黒のゼリージュースと黒・白混合のゼリージュースを使った皮ものの作品です。

 黒を飲むと皮だけになる。白を飲むと自由変形。で、混ぜて飲むと一皮剥けて、その人間の着ぐるみができるということにしてみました。

 そして今回は被るのではなく被らされるという強制変身のテイストで書いてみました。

 ところで最後の選択、自分だったら果たしてどれを選ぶんでしょうね。

 

 それでは最後までお読み頂きました皆様、どうもありがとうございました。